Hands -EPISODE 2 04-





 俺はセフィムがいる場所に踏み出した。その瞬間全身に耐えがたい苦痛が走った。それでも俺は歩きつづけた。そのうちだんだんと、痛みは遠ざかっていった。決して消えたのではない、それはただ、意識や感覚が遠のいていくだけだ。気を抜けばすぐにあの痛みに殺されてしまうだろう。そうじゃなければ、俺はこの世界に飲み込まれてしまうだろう。


 人間として”ミナ”をつかまえようとした俺は、この目的や今までの記憶を失った。ただ、人間として生きてきた記憶を植え付けられた。俺はこんなことをするはずはなかった。こんな事ができるのは……セフィムだけだ。その怒りを、今にも棒と化してしまいそうな足に向け、いっそう地を踏み鳴らして歩いた。
 永遠と続くと思えた暗闇は、俺の次の一歩で消えた。同時に今まで必死に俺にしがみついていたあの痛みも引いていった。その反動で四つんばいになった俺に見えたのは、真っ赤な絨毯だった。

 そこは玉座だった。


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