Hands -EPISODE1 04-
2つが互いに交じり合う、そんなところに私は居た。光と闇、それぞれに天使が居た。
真っ白な羽根、真っ白な服、清い身体、ブロンドの髪……白い天使は優しい瞳で私を見つめる。何処からともなく吹く風に、髪を揺らし、身を任せる姿は美しかった。
真っ青な羽根、真っ黒な肌、血の匂い、汚れたからだ……黒い天使は、悲しい瞳で私を見つめる。何処からともなく吹く風に、さからうようにうかぶその姿は……
白い天使は言う。帰りなさい、と。
黒い天使は言う。こっちへおいで、と。
目がさめたときそこには私の手を握り締めて眠る一人の男が居た。男の手は、冷たかった。
「おはよう。」
「あぁ……寝てた。っていうか、あんた、今日何日かわかる? 3日も寝てたら、わかんえぇだろ。おきてよかった。心配したんだぜ?」
「ごめんなさい……夢を見てたの。とても……とても怖い夢を。」
『夢なんかじゃないぜ? 本当の世界さ』
「うっ……誰?! 誰なの?!」
「み、美奈?!」
『聞こえるのか? そうか、また会おう、ミナ』
「誰……だれ……なの…」
美奈は急に怯えだし、俺はどうすることもできず、ただ彼女を抱きしめるだけだった。しばらくして彼女が口を開いた。
「ご……ごめんなさい。急に……ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。いつまでくおしていてもいいよ。気がすむまで……」
彼女が流す涙が、他の誰の涙よりも綺麗に光落ちた。
「落ち着いた? もう大丈夫?」
返事がない。どうやらまた寝てしまったようだ。いったい彼女に何が起きたのだろうか?彼女に見えた、いや、聞こえたのはなんだろう。俺は、美奈を腕の中に入れたまま、しばらく考えていた。そのうち何時間もたっていたことに気が付き、美奈を見下ろすと、彼女はほんの少し身じろいだ。
「あ……ごめんなさい。私……」
ゆっくりと手をといてやると、恥ずかしそうに笑った。軽くあたまをなでてやるとさらに恥ずかしそうな顔を見せた。なぜだろう、俺は、彼女のこんな顔を見ると哀しくなっていく。以前どこかで見たような、俺は昔から知っているような。
「今日はどっかで食うか……これから何か作るのめんどいしな?」
俺は彼女を置いていくように立ち上がり、入り口の扉をあけた。振り返ると彼女は心細そうに俺を見ていた。軽く手招きすると嬉しそうにこちらへかけてくる。
そんな美奈を俺は”キョゼツ”している。何故だろう。
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