Hands -EPISODE1 02-
「あなたも、乗ってください!! ほら、早く!」
「お、俺はこの人の関係者とか、知り合いじゃねぇんだけど…――「いいから!」
引きづられるようにして初めて乗った救急車。まぁ、どうせあの野次馬の中でどうやって帰ろうか困っていたのは確かだが……
特に外傷は無さそうだが、顔が青白い。危ないんじゃないのか? コレ。
ふと、彼女の喉に亀裂が入ったような傷跡がある。最近のものではなさそうだ。
もちろん、そこには俺が道端で見つけたあの女が寝ている。看護士が言うには、幸い何処にも傷が無いのだとか。後は彼女が目を覚ますだけらしい。って、俺に言ってどうしろ、というんだ。
とりあえず、女のそばに座ってみる。ベッドのロッカーに、看護士から渡された女の服を入れておく。真っ白なワンピースが少し泥で汚れている。
しばらくすると、女はそっと目を開けた。しばらく視線を泳がせ、ついに俺のところへ来たのだが……さして気にする事も泣く再び目を閉じようとしていた。
「おい、ちょっと待ちな」
静かに言ったつもりだったが……少し口調がキツくなってしまったのだろうか。脅えためでまじまじとこちらを見られる。
「あんた、車に引かれて倒れてたんだぜ? ……大丈夫か?」
とうなずくとゆっくりと起き上がった。
「……あの……」
「今、看護士さん呼ぶよ」
しばらくしてさっきの看護士がやってきた。彼女の体温やら血圧やらを測っている間、俺はなんともいえない気持ちで待っている。本当なら、ここで帰るところなのだが……そうもいかないらしい。何せ、女は自分の身元がわかる物を一つも持っていなかったのだ。財布さえ無いらしい。病院側にとっては、俺はたった一人の手がかり。住所やら連絡先を聞かれた後、やっとの事で帰宅した。
実家とは別の、俺の住まい。小さなアパートで、今日はたまたま散らかっているだけだ……
病院から明日またきてほしい、といわれたが……まぁ、見つけたのは俺なんだからしょうがない。
熱い……体が、体が熱い……
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