Hands -EPISODE1 06-




「ミナ、目を開けるんだ。目を覚ませ」
 私は小さく瞬きをしながら目を開けた。そこには青黒い闇が広がっている。今、どこからか声が聞こえてきた気がしたのだが……
「そうだ、俺がお前を呼んだのだ。いつまで背を向けているつもりだ。こっちを向いてひざまずけ。」
 振り向くとそこにはシンプルに飾られた大広間だった。真中には真っ赤なじゅうたんが伸び、私の足の下にもそれがある。ソノ先には玉座があり、そこに座るものは、私の知らぬ王だった。
「……あなたは? 誰ですか?」
「口を慎め、ひざまずけ」
 王が軽くてをふったとたん、私の身体は重くなり、不本意ながら王にひざまずく格好をとっていた。私は精一杯抵抗
「ほう? 俺に逆らうか。ミナよ。俺がお前に与えた恩を忘れたか。そして、俺はお前に重要な仕事を何度も与えたというのに、俺はお前に感謝しているのだぞ? お前のおかげであのいまわしい境界線などから逃れ、また再びここに座ることができたのだ。」
「何を、言っているんですか……?」
「おお、そうだそうだ。お前には人間を着せていたのだったなぁ、忘れていたよ」
 王は玉座から立ち上がり、はおっていた満とをなびかせた。ゆっくりと、しっかりとした足取りで近づいてくる。真っ黒なはだ、真っ青な羽根、黒髪を靡かせて……
 私は彼の威圧に押され、全く動けないで居た。彼が近づくに連れて、足の震えは止まらなくなっていた。王の顔が間近に鳴ると、私は跪くことすら耐えられなくなり、真っ赤な絨毯の上に座り込んだ。
「どうした? 俺が怖いか?」
 長い黒髪で隠に似合わぬ言葉に表現できぬほどの美しさがソノ瞳にはあった。私は彼の瞳につかまり、逃れる事はできなかった。
「人間よ、この俺が怖いか、うん? 怖いか?」
 追うわ私の顎を軽くつかみ、顔を近づける。
「い、いや……やめてください!」
「おまえは、私への忠誠をこの首の傷に誓ったろう?」
 私の口唇に王のソレが触れた。余計に私の腰が砕けた。力が抜けて離れそうになると、王は私の後頭に手を回し、一層深く口付けをした。頑なに閉じていた
「思い出したか? この俺様が唯一愛した天使……目を覚ませ、はやく俺に愛の言葉を囁いてくれ……」
 王は口唇を私から離し、私を確かめるように強く、抱きしめた。彼がつむぐ言葉は全て微かに震えていた。
「セフィム様……」
 私は今全てを思い出した……


EPISODE 2に続く