「Black Time FantasiaT」



 メルサ ♀:24歳。エルフの娘、気が強いが人想いなやさしい性格。

 シュラン♂:27歳。エルフの男、メルサとともに旅をしている。穏やかだが時に冷酷。

 スラセオ♂:エルフ族の族長。何に対しても容赦はない。

 ライト ♂:35歳。西南の国の軍隊長。メルサ達を毛嫌いしている。

アドル♂or♀:12歳。不思議な本を見つける。性別は男だが、声が高いので両。軍兵と被りで。

 軍兵♂or♀:ライトの近くにいた西南の国の軍兵。


配役表 1:3:1
メルサ♀:
シュラン♂:
スラセオ♂:
ライト♂:
アドル&軍兵♂or♀:


 メルサ:なぜ人は争う?戦争の所為で、たくさんの人々が
     儚い命として散っていくというのに…
     いつの間にか、そんなことお構いなしに
     なってしまったのか?
     なぜだ…なぜ………
 ――――

 アドル:『ハァ、ハァ……ぅわっ…』

 メルサ:な、なに?! あれ!!

アドル:『本が……?』

シュラン:本? 本だって?!

アドル:『あ……!』

 メルサ:うっ……眩しい…ッ!

 ――――

 メルサ:「Black Time FantasiaT」
     儚い命として…生きる事がそんなにも…

 ――――

 メルサ:……ここは、にぎやかでいいな。
     これから何も起きない…って……

シュラン:…まぁ…そう言うな。今はまだ…

 メルサ:かわいそうだな。皆……

シュラン:まぁ、いつものことだろう?

 メルサ:フン。誰だって……ただ平和を表に被っているだけだ。
    人なんてそんなものだ。正直さのかけらさえないんだ。

シュラン:……

 メルサ:そんなオーラが豊かな国の後ろに隠れているだけさ。

 ――――

 ライト:密偵…か。

  軍兵:そうでしょうか?

 ライト:なんだ、乗り気じゃないな。エルフだぞ。他に何の用があってくるって言うんだ。

  軍兵:…さぁ。

 ライト:なんなんだよ。まったく。

シュラン:こっちのほうがなんなんだといいたいよ。

 ライト:なっ、お、おまえら……

シュラン:こちらはキミたちと違っておちょくるならそれなりに
     本気を出す主義でねぇ。勘違いされちゃ困るんだよ。

 ライト:だったらなんの用だ!!

シュラン:なんだ、下っ端は世界の歴史に何も目を当していないようだな。

 メルサ:わたし達のことくらい知っておけ、無知な下っ端。

シュラン:ま、我々を知らぬのならそれはそれでいいんだがね。
    あんた達にかまってる暇はないんだ。王とやらにあわせてくれ。

 ライト:お前達のような不審者が、何をぬかしてる。さぁ、帰れ!

 メルサ:不審者だって。ハッ、笑わせるな。

 ライト:なんなんだ、こいつらは……いいだろう。そんなに会いたいならあわせてやるよ。
    おい、連れて行って差し上げろ。

  軍兵:はっ。

 ライト:くれぐれも『無礼のないよう』。

 メルサ:頭に来た、お前! 人にものを言う礼儀という物を知らないようだな!
    わたしがじきじきに教えてやろうか!? このぉ…

 ライト:なんだと?!

シュラン:よせ、メルサ!

 メルサ:わたしたち気高きエルフ族を侮辱するな!!!
     無礼者…わたしの目の前からとっとと消えろ!!!

シュラン:メルサ!!

 メルサ:離せっ…シュラン!

 ライト:…フッ、そんなに睨まないでくださいよ、お嬢さん。

シュラン:これ以上口を交わす気もないが、こちらも無礼、失礼したな。

 メルサ:……

  軍兵:お二人とも、こちらです。

 ――――

スラセオ:ふたりを呼んだのは言うまでもなかろう。
     再び顔を合わせたとき。いま、そのときだ。

シュラン:スラセオ様。やはり…

スラセオ:…そう…だ。

 メルサ:久しぶりの顔ぶれですね。

シュラン:今回は…何処(いずこ)の国で?

スラセオ:西南の国…と。

シュラン:あの国は、まだ……

 メルサ:なんということ…

スラセオ:………きっと…お主らはもうこの地へは
     戻ることはできぬだろう。

 メルサ:スラセオ様?

シュラン:わたし達を…そんな…

スラセオ:すまない。規約という物は残酷な物さ。

 メルサ:今…今が、エルフがこの地を去るときなのですか?

スラセオ:……そうだ。

 メルサ:どうして! どうして今なのです! 今でなくても…もうすこし先でも!!

シュラン:……誓いましょう。我々はどんなことがあっても、種族を守ります。
     センドラ、カイヴァー、マカーヴ、ジョーアを。

 メルサ:シュラン!? お前!!

スラセオ:すまない…あれほどお前たちには世話になっておいて
     こんなことを頼むなんて…

 メルサ:わたしは、わたしはまだ引き受けていません!!

シュラン:メルサ、もうよせ。

 メルサ:どうして? どうして?! わたしは、あなたや村の人たちのために、
    わざわざ死神のようなことを今までしつづけたのに!!

シュラン:メルサ!

 メルサ:なんだ、なんなんだ!! スラセオ様……わたし達が何をしたというんだ!!!

スラセオ:……

 メルサ:……結局何も答えてくれないのですね…。

シュラン:スラセオ様……

 ――――

 メルサ:シュラン、もう、こんな思いをしたくないの……
    村へ帰ろう? わたし達の……わたし達の村へ……

シュラン:……でも……。わかった。いいよ、帰ろう。

 メルサ:仕事はキッチリつけてから…。

 ――――

  軍兵:さっ、こちらです。

シュラン:ほう、噂どおり立派な宮殿だなぁ。

 メルサ:人間(ひと)はバカだな、本当に

  軍兵:何を言いますか! だいたい、あなたたちに何がわかるんだ!!

 メルサ:何がわかるだと? 何もわからないさ、わかりたくもない!
    何を目的にしているんだ? 闘いの勝利か? それがなんだ!
    虚しいと思わないのか、哀しいと思わないのか!!
    幾千もの命を奪っておいてなにが勝利だ!! 何が勝っただ!

  軍兵:…っ……お、王は、わたし達に全てを与えてくれる!
    何も……何も不自由なことはない!!

 メルサ:そうか、じゃあ聞く。その王は戦でなにをする?
     自ら戦に出向いて、兵と共に戦うか?

  軍兵:そんな危ないことを…

 メルサ:危ない事だと?
     ハッハッハ…そんなことは百も承知だろう。
     お前は、危ない戦に出て、あぶないことはしない
     王のために命をかけるのか?
     戦で何もしない王から、きづついたお前に何をくれるというのだ!!!

  軍兵:…お、お前らの王とて――

 メルサ:――我らエルフの王をバカな人間(ヒト)と一緒にするな!!

  軍兵:っ!!

 メルサ:王はともに兵と戦い、刻(トキ)にともに
     死に逝くものだ!
     頑丈な城で刻が過ぎ行くのを優雅に見ている…
     そんな腰抜けの王ひとりに何ができるというのだ!!

シュラン:…メルサ。もう行こう。

 メルサ:……何がいいのだ……何故争わなければならないんだ……